11月5日(土)~6日(日)の2日間、香川県社会福祉総合センターで行われた日本口腔インプラント学会中国・四国支部学術大会に参加してきました。
メインテーマは、『患者さんのニーズに応える歯科インプラント治療を考える』です。何名かの先生方が発表されました。
専門医教育講座として、今回もまた「インプラント治療と顎骨壊死を考える」というテーマで福岡歯科大学口腔顔面美容医療センターの山下潤朗教授が講演を行いました。
最近、どこのインプラント学会に参加しても「インプラント治療と顎骨壊死」という問題が取り上げられています。この講演でも骨粗しょう症の治療に使われるビスフォスフォネート製剤(以下、BP剤)の長期間投与や抗RANKL抗体(骨吸収抑制薬)の静脈注射が顎骨壊死の原因になっているという報告が行われました。
高齢化が進む我国では、骨粗鬆症や悪性腫瘍などの病気を発症する高齢者が急増しており、乳がん、肺がん、多発性骨髄腫などの治療の後、骨転移を防ぐためにこれらのBP剤や抗RANKL抗体を投与されるケースが増えています。
これらのBP剤を長期投与すると、顎骨壊死だけではなく大腿骨の骨折を起こしやすくなるという報告もあります。今後は整形外科からの投与は少しずつ減少していくのではないかと発表されていました。
これからの高齢者に向けた歯科治療では、他科(内科や整形外科など)の先生方と連携して治療にあたることが重要だと思います。
顎骨壊死を引き起こす原因として、むしろ気を付けなければならないのは感染症です。義歯の不適合による潰瘍、虫歯の菌が歯根の先端に入って起こる慢性の根尖性歯周炎、慢性の辺縁性歯周炎(歯周病)、そして口腔内の不衛生などにより感染症を起こし、顎骨壊死に移行するケースが多く見られます。口腔内の衛生管理が何よりも大切になってきます。
BP剤や抗RANKL抗体を長期間投与されていない患者さんについては、インプラント治療は細心の注意を払って行えば顎骨壊死を起こす症例は少なく、危険な治療ではないということも報告されています。