35年を振り返って。総合力を身に着けることの大切さ

私ども医療法人は、山口歯科を開院して今年で35年になります。

当院には、全ての歯を治して固定式の歯にしたいというような、全顎的治療を求めて来院される方が多くいらっしゃいます。例えば歯が全くない方に、7本、8本のインプラントを埋入するケースです。

 当然、治療費はかかるのですが、そうした総合的な治療を全ての歯科医ができるかというと、そうではありません。

総合的な治療を行うには、基本的なこととして歯の神経を取って根管充填する、歯内療法を行う、歯冠補綴をする、歯を抜いて欠損補綴をする。そして入れ歯なのか、ブリッジなのかインプラントなのか、的確に判断し選択するなど、全ての段階をオールマイティに行えることが求められます。

 最近の若い先生の傾向を見ていると、治療のこの部分はできるけど、それ以外はできない、これは得意だけど他は苦手など、技術に偏りがあるように感じます。そうして、大掛かりな治療になると、躊躇しまうのです。

 しかし若い先生も総合的な治療ができるようにならなければ、患者さんの満足度、治療の完成度を上げることができません。

技術の偏り、苦手な分野を克服するためには、若いうちからいろいろな臨床経験を踏む必要があるのですが、私たちが育った頃より、そうした経験をする機会が今は少ないように感じます。

 その理由は、患者さんの厳しい視線、そしてインターネットによる批評、書き込みがあるために教育の現場がネガティブになり、指導者がかつてのような思い切った教育をできないことにあるようです。

 最初から何でもできる人は、ごく稀です。少しずついろいろな経験を積み重ねることで知識が身につき、技術が向上するのです。

最初から成功し、うまくいった症例などは、何も自分のためになりません。

 あるテレビドラマで、外科医は何百何千の手術を経験して、ようやく一人前になっていくと言っていましたが、歯科医も全く同じです。ただ、今はその機会が得にくいと思います。

 日本の人口と、歯科医の数のバランスも影響していると思います。35年前に私がこの磯子で開業した時は、何も宣伝しなくても1日100人の患者さんが来院し、一人で70人から80人の保険診療を行っていました。ただ、雑な治療はしていなかったし、その頃保険診療した歯が、20年もったという話を患者さんからよく聞いています。

 患者さんは、治療してもらった歯のことはよく覚えていらっしゃいます。長期的に成功した治療は、のちに他の治療につながるなど、必ず良い形でフィードバックされると感じます。

最近の若い先生は、最先端の治療や知識に興味を持っているのですが、いざ基本的な治療をやってみると、できないということがあるようです。これではだめなんです。最初から難しいインプラント手術ができるわけではなく、まずは普通の抜歯ができて、歯の根っこを分割するようなテクニック、移植を行うなど徐々に高度な技術を身に着けていく。それが大事なんです。

この35年を振り返って、そんなことを考えています。

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