70代の女性です。これまでインプラント治療を受けたことの無い方でした。上顎の多数歯欠損に対し、他院では部分入れ歯を薄い金属を使ったものに作り替えることを提案していたようです。
私は「この症例ではインプラントを使った固定式のブリッジ(ボーンアンカードブリッジ)ができると、患者さんに説明しました。自分ができるキャパシティの中で患者さんの治療方法を限定し、決めてしまっています。これではだめなんです。治療にはいろいろな方法があるので、その先生ができるかできないかに関わらず治療方法についての情報提供しなければなりません。
尚且つ他院では、CTや口腔内スキャナーを使い、ガイドを使い、フラップレスで行うインプラント治療の発想がなかったようです。
70代の患者さんに対して、1度に7本か8本のインプラントを同時に埋入するというのは、従来の骨膜粘膜を剥離する方法ではかなり侵襲度が高くなります。CTを見ると、骨量は豊富にあり、骨質もインプラント治療に適していて、フラップレス手術ができることがわかりました。残存歯もあるので、歯牙支持型のガイドを作ることができます。そして患者さん本人も、静脈内鎮静法を使ったインプラント治療を希望されました。
結果として、約1時間の手術で同時に8本のインプラントを埋入することができました。
翌日、消毒のために来院されましたが腫れも痛みもありませんでした。その様子を見たご主人が、「自分がインプラント治療を受けた数年前とは全くシステムが違うなあ」と驚いていらっしゃいました。結局、ご主人も同じような方法でインプラント治療を受けることになりました。
この患者さんは、今まで入れ歯が当たって痛くて食べられず、発音しづらく困っていましたが、それらの悩みはすっかり解消されました。インプラント治療によってQOL(生活の質)を上げることができました。歯科医は自分のできる技術の範囲内で患者さんの治療法を決めてはならないということです。
術前 パノラマ写真
術後 パノラマ写真
術後 口腔内写真