ペースメーカーを使用している患者さんに対し、静脈内鎮静法を行い、フラップレスでインプラントを3本埋入した症例


70代男性です。心臓に疾患があり、ペースメーカーを装着している方です。
ご本人の希望で、下顎の臼歯部に3本のインプラントを埋入することになりました。全身疾患があるため、局部床義歯という選択肢も考えられましたが、固定式のブリッジを希望されました。年齢も考慮し、できるだけ低侵襲の手術を行う必要がありました。
術前のCT検査で埋入する骨の状態を精査したところ、骨質、骨量、そして骨の形態もガイドを用いたフラップレス手術に適していることがわかりました。
手術は30分程度で終わるのですが、ペースメーカーも使用されているため、歯科麻酔専門医の管理のもと静脈内鎮静法を行い、歯牙支持型のガイドを用いてフラップレスでインプラント手術を行いました。

ペースメーカーにもいろいろな種類があります。この方が使用しているのは、レート固定型です。何らかの刺激が来ても心臓のレート(心拍数)を一定に保つことができます。 
例えば局所麻酔薬を打つ場合、その中にエピネフリンという薬剤が含まれているため、健常者ではレートが少し上がってしまいます。
一方、レート固定型のペースメーカーを使用している方は、この局所麻酔薬を打ってもレートは変わりません。
ただし、その局所麻酔は低速でゆっくりと行わなければ、心臓に負担がかかってしまうのです。
このように、その患者さんがどのようなタイプのペースメーカーを使用しているかも考慮しながらインプラント手術を行い、適切に対応しなければならないのです。
また、当院では止血剤としてボスミンを使用することがあります。
その濃度、使用する量にも気を付けなければなりません。

ですから、この患者さんの場合はできるだけ出血量が少なく、侵襲度も少ないフラップレスのインプラント手術を行うことを心がけました。
手術は無事30分くらいで終了し、翌日消毒のために来院された時は、腫れも痛みも感染もありませんでした。
このように、われわれ歯科医はただ歯の治療をするだけではなく、全身的疾患に対する幅広い知識を持ち、患者さんがどのような手術を受けているかを把握して治療にあたる必要があるのです。 

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