麻酔科医との連携の重要性

先日のインプラント手術で静脈内鎮静法を行ったので、長年当院がお世話になっている歯科麻酔指導医に立ち会っていただきました。

術後に興味深い話をしたので紹介します。

その先生から、「上顎洞底挙上手術を行う際、オペレーターとしてどんなことに注意していますか?」という質問をされました。それは即ち、「静脈内鎮静法を行う歯科麻酔医との協力体制において注意すべきことは?」という意味です。この先生は、何かの試験問題を作る立場の方なので、その参考にしたいという話でした。

私がいつも念頭に置いているのは、サイナスリフトに限らず、静脈内鎮静法を用いる手術には(全身麻酔と違い)時間的な制限があるということです。2時間から2時間半で手術を終える必要があります。とくに高齢の男性の場合は、トイレに行きたくなることもあるので1時間から1時間半で終わらせるよう心がけています。

「重要なのは、麻酔科医とオペレーターとがタイミングよく手術を進めること。そして時間配分です。今、手術のどのステージを行っているのか、この後どのくらいの時間をかけて次にステージに行くのか、最後のステージが終わるまでどのくらい時間がかかるのか。常にコニュニケーションを取りながら進めなければ、時間配分はうまくいかないのではないでしょうか」、と答えました。

基本的なこととして、上顎洞底挙上手術において私が大事にしているのは、麻酔科医と私と患者さんとで行う、手術開始前の最終的な全身状態のチェックです。それまでに何度も問診は行っていますが、あらためて健康状態を確認し、これから行う手術と麻酔法に対して同意を得ます。

そして、上顎洞底挙上手術には、次のようなステージがあります。まずは確実に局所麻酔を行います。静脈内鎮静法は患者さんの精神状態を鎮静させるものなので、麻酔は必要です。次に、モニタリングの状態、Bisモニターの値をチェックして手術が行える状態かどうか確認して切開、骨膜粘膜を充分に剥離します。ここまでが第一ステージです。

第二ステージでは、上顎骨の側面に窓開けをします。上顎洞粘膜を損傷しないように充分な注意が必要です。ここまでを20分以内に行うのが私の目安です。

次の第三ステージで、骨膜、洞粘膜を挙上します。それが20分から30分。そして第四ステージでインプラント窩の形成、骨補填材+自家骨の充填、インプラントの埋入、必要に応じて骨造成を行い、最後に骨膜、粘膜を元の位置に縫合します。これが一連の流れです。

インプラントの埋入は1本につき、だいたい15分。最終的には、1時間半で終えるようにしています。

このようにして、年間100症例以上の上顎洞底挙上手術を行っているので、必ずそこに立ち会っている歯科麻酔専門医は手術のステージや流れを理解しています。オペレーターとはコニュニケーションが自然にとれ、その結果、安心安全なインプラント手術を行うことができるのです。

さらに、上顎洞底挙上手術においてとても重要なことは、オペレーターは手術の各ステージを確実に終わらせてから次のステージに進むということです。確かに手術をできるだけ短くすることは重要ですが、もしうまくいっていないのなら、前のステージに戻ります。これは、一般の外科手術にも通じる基本中の基本です。

確実に1つのステージを終わらせてから次に進む。それを何百症例も行って経験を積んだ結果、時間の短縮につながるのだと思います。

上顎洞底挙上術~インプラント埋入手術の流れ

※クインテッセンス出版 ザ・クインテッセンスに掲載された当院の様子

歯科医院で対応できるのはClassⅠとⅡとなる。

a: BISセンサー
b: BISモニター
14: 鎮静方に使われる薬剤
15: 術中はHR,MAP,SpO2,ECGをモニタリング

※クインテッセンス出版 ザ・クインテッセンスに掲載された当院の様子

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